キャリア採用が難しい本当の理由とは?成功企業が実践する採用戦略
キャリア採用がうまくいかず、悩んでいる企業は多く存在します。求職者側に有利な状況が続いており、人口減...
神田(スターティア)
現在の採用市場において、内定辞退は多くの企業が直面する深刻な課題となっています。新卒採用では学生の就職活動の長期化や複数内定の常態化により、中途採用では転職市場の活性化や選択肢の多様化により、内定辞退率は年々上昇傾向にあります。特に中小企業においては、限られた採用予算と人的リソースの中で、せっかく獲得した優秀な人材を失うことは大きな痛手となります。2025年の採用環境では、働き方の多様化、Z世代の価値観の変化などにより、新卒・中途を問わず内定辞退の傾向はさらに複雑化しているのです。そこで今回は、内定辞退を未然に防ぐための具体的な対策をご紹介しましょう。
まずは、内定辞退が発生する主な原因について、「中途採用」「新卒採用」「共通」の3つに分けてご紹介します。
・就職活動の長期化と複数内定
新卒学生の就職活動期間は年々長期化しており、複数の企業から内定を獲得することが一般的になっています。学生は最後まで「より良い条件の企業」を比較・検討し続ける傾向があり、早期に内定を出した企業が最終的に辞退されるケースが増加しています。特に優秀な学生ほど多くの選択肢を持つため、接点を増やし、自社の魅力を継続的にアピールし続ける必要があります。
・親や周囲の意見による影響
新卒学生の場合、親や友人、大学の就職課などからの意見が最終決定に大きく影響することが多いです。「もっと大きな会社の方が安定している」「聞いたことがない会社は心配」といった周囲の声により、学生本人は満足していても辞退に至るケースがあります。
・社会人経験の不足による判断の難しさ
社会人経験がない学生にとって、企業選びは非常に困難な決断です。業務内容の具体的なイメージが湧かない、将来のキャリアパスが描けないといった不安から、より安全と思われる大手企業や知名度の高い企業を選択する傾向があります。2025年現在においてはこうした企業も採用数を増やしていることから、中小企業の内定辞退はさらに増加しています。
・現職との比較・引き留め
中途採用の場合、内定を得た後に現職の上司や同僚から強い引き留めを受けることがあります。昇進の約束、給与アップの提示、重要なプロジェクトへの抜擢などにより、転職意欲が揺らいでしまうケースが多発しています。
・会社からの期待値とのギャップ
中途採用者に対しては即戦力としての活躍が期待されますが、実際の業務内容や求められるスキルレベルが選考時の説明と異なる場合、入社への不安が生じて辞退につながることがあります。
・家族の理解不足
転職は家族にも影響を与えるため、配偶者や家族の理解と協力が不可欠です。特に、配偶者の理解が得られないことで最終的に内定辞退となるケースは非常に多いです。勤務地の変更、収入の変動、労働時間の変更などについて家族の同意が得られない場合、本人は転職したいと考えていても辞退せざるを得ない状況となります。
・企業理解が浅い
応募者が企業の実態を十分に理解しないまま選考が進むことで、内定後に「思っていた会社と違う」という理由で辞退に至るケースは非常に多いです。特に中小企業では、知名度の低さから企業の魅力や特徴が十分に伝わりにくい傾向があります。求人サイトの限られた文字数では、企業の独自性や働きがいを十分に表現できず、応募者は表面的な情報だけで判断してしまうことが少なくありません。
十分な情報が伝わらないまま辞退の判断となってしまうことは非常にもったいないことです。
・選考プロセスでのコミュニケーション不足
選考期間中の連絡が少ない、面接での質疑応答が表面的であるなど、応募者との関係構築が不十分な場合、内定者は「この会社に入社したい」という思いを抱きにくいです。特に中小企業では採用担当者が兼任であることが多く、選考者一人ひとりに十分な時間を割けないことがあります。さらに、面接官の準備不足やスキル不足により、応募者の質問に対して曖昧な回答をしてしまい、企業への信頼を損なうケースも見受けられます。
・待遇面での期待値とのギャップ
給与や福利厚生、労働条件について明確な説明がなされていない、または説明と実態に乖離がある場合、内定後に他社との比較で辞退される可能性が高まります。特に昨今の人材獲得競争の激化により、複数の企業から内定を得る応募者が増加しており、最終的な判断材料として待遇面の比較が重要視される傾向にあります。
・競合他社の積極的なアプローチ
優秀な人材に対しては、内定後も他社からのスカウトや転職エージェントからの連絡が続くことがあります。人によっては1日に数十件ものスカウトメールを受け取ることもあるのです。2025年現在では、中途採用だけではなく、新卒採用においてもダイレクトアプローチはますます進んでいます。特にIT業界や専門職においては、人材の争奪戦が激しく、より良い条件を提示して引き抜こうとする企業も少なくありません。自社の内定者フォローが不十分だと、このような外部からのアプローチに負けてしまう可能性が高まります。
この章では、「中途採用」「新卒採用」「共通」の3つに分けて内定辞退を防止する具体策をご紹介します。
・早期からの関係構築
新卒採用では、インターンシップやOB・OG訪問、会社説明会などの機会を通じて、選考開始前から学生との接点を持つことが重要です。インターンシップなどに参加するのは主に3年生とされていましたが、2025年現在では1年生や2年生から積極的に参加しようという学生が増えています。そのため、企業としても1年生から受け入れる体制を整えていく必要があります。企業への理解を深めてもらうと同時に、学生個人の価値観や志向を把握し、マッチング精度を向上させることができるでしょう。また、より早い段階から継続的な関係があることで、内定後の辞退リスクを大幅に低減できます。
・保護者・大学への情報提供
新卒学生の意思決定には保護者や大学関係者の意見が大きく影響するため、これらのステークホルダーに対する情報提供も効果的です。保護者向けの会社説明会の開催、大学の就職課への企業情報の提供、OB・OGネットワークの活用などにより、学生を取り巻く環境全体からの理解と支持を得ることが効果的です。
・入社後のキャリアステップを明確かつ詳細に提示
社会人経験のない学生にとって、入社後の成長イメージを描けることは重要な決定要因となります。入社1年目、3年目、5年目での具体的な成長目標、先輩社員の成長事例、研修制度の充実度などを詳しく説明し、「この会社なら成長できる」「この会社でなら働いていけそう」という気持ちを抱いてもらうことが大切です。
・引き留めに負けない自社の魅力・価値の提示
中途採用者に対しては、現職からの引き留めに負けない魅力的な条件と将来性を提示することが重要です。そのためにはできるだけ現職からのアプローチの内容を具体的に聞き出すことがポイントです。それを踏まえ、給与面だけでなく、キャリアアップの機会、新しいスキル習得の可能性、より責任あるポジションでの活躍機会など、現職では得られない価値を明確に示すと効果的です。また、内定通知後は迅速に手続きを進め、現職での引き留め期間を最小化するよう心がけましょう。ただし、承諾期限を短くしすぎると、印象が悪くなったり、自分をそれほど必要としていないのではないかと感じたりして、内定辞退へと気持ちが傾く恐れがあるので注意しましょう。
・企業と転職者の期待値のすり合わせ
中途採用者に対する過度な期待は、入社後のギャップを生む原因となります。内定は承諾したとしても、入社後に「この会社ではやっていけない」と感じて早期退職してしまう恐れもあるでしょう。選考段階で現実的な業務内容、求められるスキルレベル、短期・中長期の目標設定について詳しく説明し、双方の認識を一致させることが重要です。また、入社後のサポート体制についても具体的に説明し、安心感を与えることで内定承諾につながります。
・家族理解の促進
中途採用者の家族に対する配慮も重要な要素です。転職に伴う生活の変化について家族が理解し、協力的になってもらうため、必要に応じて家族向けの説明機会を設けることも効果的です。勤務地、勤務時間、収入の変化、福利厚生の内容などについて、家族にも安心してもらえるよう、職場からではなく家庭環境からの視点をもって、丁寧に説明することが大切です。
・ 選考プロセスの改善
選考の早い段階から企業の現状を包み隠さず伝えることが重要です。職場見学の実施、現場社員との面談機会の提供、実際の業務内容の詳細説明を通じて、応募者に企業のリアルな姿を理解してもらいましょう。中小企業の場合、「社長との距離の近さ」「裁量権の大きさ」「成長機会の豊富さ」といった中小企業特有の魅力を具体的なエピソードと共に伝えることが効果的です。
・待遇・条件の明確化
基本給、各種手当、賞与の仕組みを具体的に説明し、可能であれば入社後の昇給モデルケースも提示しましょう。中小企業では大企業と比較して初年度給与が低い場合もありますが、成長に伴う昇給の可能性や、責任あるポジションへの登用スピードの速さを具体的に示すことで、長期的な魅力を訴求できます。
・ 内定者フォローの充実
内定通知後から入社まで、月1回程度の定期的な連絡を継続しましょう。メールや電話での近況確認、会社の最新情報共有、入社準備サポートなど、内定者が孤立感を感じないよう配慮することがカギとなります。同期となる内定者同士の交流機会を設け、帰属意識の醸成と不安の軽減を図ることも効果的です。特に新卒採用においては内定から入社まで半年から長ければ1年以上あるケースもあります。社内の季節イベントへの招待、内定者アルバイトとしての就業、任意参加の研修実施、若手社員との面談など、定期的な接点を持ち続けることが重要です。
新卒採用・中途採用ともに、内定辞退の防止にはそれぞれの特性を理解した継続的な改善努力が必要です。新卒では学生の成長志向と周囲の影響を考慮した長期的アプローチを、中途では即戦力としての期待値を調整することと現職や他社との競合を意識した戦略的アプローチが重要といえます。
中小企業においては、限られたリソースでも創意工夫により独自の魅力を発信し、応募者との深い信頼関係を築くことが可能です。経営層との距離の近さ、幅広い業務経験、早期の責任あるポジション登用など、中小企業ならではの価値を適切に訴求することで、優秀な人材の獲得と定着を実現できるでしょう。
今回紹介した対策を参考に、効果的な内定辞退防止策を実践していきましょう。